クレジットカード支払いの不具合騒動からみる広告主の不満と不安

9月 21, 2011 | PPC広告全般

既にご存知な方も多いかと思いますが、先月 AdWords のクレジットカードによる自動支払いを利用している一部のアカウントにおいて、不具合が発生しました。

僕自身(正確には、クライアント様)も、その影響を受けました。

ユーザーの主張

特にフォーラムでは、ユーザーからの苦情が相次いでおり、皮肉にも、AdWords のフォーラムではみたことがないくらいの盛り上がりを見せています。

その内容は、

  • システムエラーは仕方ないにしても、メールだけの対応で済まそうとする、その対応
  • Google 側のエラーにも関わらず、広告主に対して別の支払いを要求する姿勢
  • 広告が停止している期間、競合に潜在顧客を取られる心配
  • クレジットカードの請求のタイミングにエラーがでるというリスク
  • 対応を迫られた際に要した時間のロス

といったものから、関係ない Gmail のバグまで、いろんな意見が飛び交っています。

見解

いろんな方の意見があって良いと思うのですが、僕なりに解釈したのは、今回の件はクレジットカード支払いに不具合が生じ、それを会社全体で解決するのではなく、メールやフォーラムだけのサポートからのメッセージだけの対応で解決しようとしたその姿勢が、問題だったのではないかと思います。

その原因は、ユーザー側が感じる被害と Google 側が捉える問題の大きさに、開きがあったのではないかということです。

更には、日頃から AdWords に対して不満を持っていたユーザーが、王様企業で完璧な振る舞いをしているから普段は文句が言えなかったけど、今回の件でスキができたから、そのスキに浸け込むような背景が少なからずあったのではないかと思うのです。

広告主にビジネスの透明性と的確なサービスの提供を求める反面、AdWords サービスそれ自体は、何がどういう仕組みでどう使って良いのかよく分からなかったり、不透明な部分が多いと感じるユーザーの声をよく耳にします。

AdWords を使う恐怖

上記の不透明さから、AdWords に対して恐怖感を抱いているユーザーも少なくありません。そのユーザーのタイプは、次の2種類に分類できます。

ひとつは、AdWords のことをはじめたばかりで、どこで何が起こっているのか、さっぱり検討がつかないタイプ。

自分で設定したは良いのですが、それが果たして良いのか悪いのか、間違ってないのか(もちろん正解など無いのですが、その正解があるかどうかもわからない状態)、もっと言うなら幾らのお金を何処で使うのかが、分からないというユーザーです。

あれだけ何度も指摘しているのに、検索連動型広告(検索ネットワーク)を使っていると思っていたのに、知らずにディスプレイネットワークにも広告が出てしまっているというユーザーを今でも見かけます。

何も知らない人が AdWords のクーポン券をもらっただけでアカウントを作っても、まず専門用語だけで圧倒されてしまうのも理解できますし、専門用語を乗り越えて、勇気を持ってキーワードなどの設定をしたところで、その機能の多さにコントロールを失い不安になるのは当然なのかもしれません。

もうひとつは、AdWords を上手く使いこなしてビジネスが上手くまわりだしてるユーザーで、突然広告がストップしたり、クリック数や表示回数が減ってしまったりする恐怖です。

AdWords が使いこなせるほどの経験を積んだ方であれば、一度ぐらいは経験したことがあるのではないかと思います。

もちろん、それを解決するのが経験やスキルになるのですが、なかにはコントロールしきれないものもあるし、一般に公開されているツールである以上、そこまで高い経験やスキルを要求されるのも良い状態とは言えません。(まあ、それがあるからエキスパートとして仕事が出来るというのもありますが、業界全体としては健全ではない気がします。)

これらのタイプのユーザーが、恐怖を感じる一番の理由は、大抵の場合は解決するのに機械を相手にしなければいけないという事ではないでしょうか?

パソコンの前に座り、AdWords アカウントとにらめっこしながら、『ああでもない、こうでもない!』 という検証をしなければいけません。

『どうなってるの?』 という質問が出来る人も通常はいませんし、ましてや 『この責任は、どうしてくれるんだ!』 と怒りをぶつける場所もありません。(まあ、その場所が今回はフォーラムだったわけですが、それで納得はできないと思います。)

『よく分からないなら、代行してくれる業者を使えば良い。』、『満足できないのであれば、使わなければ良い。』、というのも一理あるとは思うのですが、それを言ってしまうと、どこかのテレビ局の問題と同じ(それについては知識不足なので特別な意見はないのですが…汗)になってしまいますので、お互いの歩み寄りが必要だと思うのです。

Google に期待すること

Google がここまで急激に成長したのは、その常識がなかったことも理由の一つだとは思いますが、業界のトップをいく企業であることを考えれば、インターネットは、危険な場所という一部の評判を覆すまではいかないにしても、それに拍車をかけるような体制では、業界自体の発展は期待できません。

具体的に言えば、もう少し人間味のある対応を考えても良いのではないかと思うのです。

この部分に関して言えば、Yahoo にあって Google に無い部分という感覚をもっているユーザーは少なくないと思います。

もちろん、Google はアメリカの会社であり、コンプライアンスがとても厳しいので、日本だけで決められないこと、容易にできないこともたくさんあると想像します。

でも逆に言えば、それをやるために日本にオフィスを構えて活動をしているのではないかとも思うのです。

正直なことを言うと、そういったところを覆そうと Google が努力しているのを、特に最近すごく感じます。でも、一般のユーザーに浸透していないのが残念で仕方が無いから、あえて書かせてもらいました。

ユーザーがやるべき事

今まで “お高い感じ” や “機械的な冷たい感じ” があった Google ですが、

  • 電話サポート
  • セミナー・イベント活動
  • 動画の提供
  • ユーザーフォーラムの充実

などなど、いろんなところでユーザーへの歩み寄りやサポートを試みているのはありがたい事ですし、それが多くのユーザーに浸透することを願っています。

あとは、これからもっと高度な知識が要求されるかもしれないので、僕自身を含めてユーザー側の理解と学びも必要になるのかなという気がします。

例えば、AdWords というシステムは、お金を払いさえすれば、表示回数やクリックが保証されるものではありません。

それが例えシステムのエラーであったとしてもです。

今回のクレジットカードのエラーもそうですし、例えば数日間広告がストップしていて、おかしいなと思い問い合わせたら『単なるシステムエラーでした。ゴメンナサイ。』のメールだけだったというケースもあります。

僕が冷静でいられるのも、広告が数日間止まるぐらいは当たり前で、それを前提にリスク管理をしていて、その経験のおかげなのかもしれません。

それを非常識と考える人もいますが、じゃあ何が常識っていう事になりかねません。

広告代理店の代理店の代理店に、中間マージンを払って、担当者と飲みニケーションしながらやるのが広告の常識なら、中小企業の担当者は直接 AdWords を使わないほうがいいと思うのです。

今回は、偶然ネガティブな部分が表面化してしまいましたが、良いところだけは欲張りして、悪いところだけを批判するのは、あまりよい付き合い方とは思えません。

常識だけを求めると、なかなか良いサービスも生まれません。(または、その常識すら変化していて、我々がそれについていってないだけなのかも…)

まとめ

今回の記事を公開するのは、正直ちょっと悩みました。

いろんな意見があって良いと思います。(この記事に対する批判も大歓迎です。)

ただ、せっかくなら、非常識を批判するよりも(批判したり、Google に対して文句を言いたくなることは、僕自身も何度かありますが…笑)、そのシステムと上手く付き合い、利用してやる側の人間が増えたらな〜っと。

このエントリーをはてなブックマークに追加

申し訳ございませんが、古い記事に対するコメントは締め切らせて頂きました。